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ユヌキャバンヌの「昨夜も映画を観てました」

バスキア展によせて-映画『バスキア』

 

今月21日(土曜日)から、六本木でバスキア展が開催される。

macg.roppongihills.com

www.basquiat.tokyo

ジャン=ミシェル・バスキア
誰それ?ってお思いになっても、
ユニクロのコラボTシャツのあの絵の人、って言われたら、
ああ!ってなる方が、かなりいらっしゃるだろう。
知らずに、Tシャツ買われた方もいるかもしれない。
カッコイイよね!

sprzny.uniqlo.com


国内初の大規模展開催によせて、ということで
バスキア関連の映像作品に触れていきたい。

1作めは、96年の伝記映画。

原題:BASQUIAT
ジュリアン・シュナーベル監督・脚本
1996年、米

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www.youtube.com

【優しいけどさびしい映画】

古くさい感じがちっともしない映画だった。
クリストファー・ウォーケン若いな~!!とは思ったが。
知ってる役者さんが出てなかったら、
23年も前の作品だとは、わからなかったかもしれない。
センスが良かったってことじゃないかな。
音楽も、なめらかで、うるさくなく、
映画の雰囲気とマッチしていたと思う。

監督が故人と親しかったせいもあるのか、
バスキアジェフリー・ライト)に
注がれるまなざしは、どこまでも優しかった。
また、80年代アート界を席巻した夭折の天才、
その伝記というには、
あまりにも静かで、さびしい映画だった。

 

 

バスキアの印象】

この映画を観てわたしが抱いたバスキアの印象。
強情っぱり。
心がとても傷つきやすく、不安定。
胸に秘めた虚栄心は若者らしく人一倍だが、
思考の裏付けがないから、行動がめちゃくちゃ。
マナー、常識、芸術についての思想、
そういうものはあまり持っていない。
全部まだまだこれからの青年だ、
ほとばしる画才以外は。

 

 

【アートに勤勉】

制作に関してとてもまじめだったことは、
観ていてはっきりと伝わってきた。
誰にせっつかれるでもなく、
アトリエに自分一人しかいない時でも、
何時間と言わず集中して描く姿がみられた。

アーティストの頭の中ってのは不可解だ。
何をどう考えた末にああいう絵が出てくるのか。
イデアを生み出すプロセスがまるで想像できず、
それが絵になって出てくる過程に
何が起こってるのかもまるでわからない。
「これで完成だ」
「ここにこれを付け足そう」
「出来が良い」
「失敗だ」
の判断の基準はどこに。
というか、そもそもなぜ絵。
描けるかどうかもわからないのにまず描いてみた、
っていうその最初の動機の部分が謎だ。
バスキアの制作シーンをみていたら
そんなことをつくづく思った。

 

 

【人びとが離れていく】

絵をほめられ気を良くしたバスキア
二つ返事で作品の売約を承諾する。
だが、その作品は、有名になるきっかけを作ってくれた人に
ずっと前から、贈る約束をしていたものだった。
そばで様子を見ていた恩人は、当然のことながら怒り狂う。

展覧会の成功を祝うディナーに、遅れて到着したバスキア
昔からの友人や、お世話になった人が待つテーブルではなく
画廊の経営者や評論家などのお歴々がいる席を選ぶ。
バスキアに無視されて、友人たちはガッカリだ。

ちょいちょい、この手の失敗をする。
有名になる前からの人間関係をなおざりにしちゃう。
そういう人たちこそ大切にしなくちゃいけないのに。
これだけのことをするからには、
相応の覚悟があったと思いたい気もしたが、
そんな風にはとても見えなかった。
古い友だちや恩人からはもちろん不満が出て、
彼らとの心の距離はしだいに開いていく。
「それなりの考えがあってやってるのさ。
 イヤなら、俺と付き合わなきゃ良いだろ」
意地っ張りだからバスキアはそんな態度だが、
「それなりの考え」なんか全然ないし、
本当はさびしいのも、はたで見てれば明白だった。

ギャラリーではスター扱いでも、
一歩街に出ればしょせん「成り上がり」の「黒人」。
心ない扱われ方をされ続けたことへの苦悩は
しっかりと描かれており、よく理解できた。
恋人とのレストランデートの場面は象徴的だった。
トイレにこもり、
ヤクのせいで、顔にどんどんできてくるポツポツを、
泣きそうな表情でしきりに気にする。

 

アンディ・ウォーホル

スターの仲間入りを果たした後に知己を得た人物の中で、
芸術的にも人間的にも確かな心のつながりが持てた相手は、
アンディ・ウォーホルだけだったように見えた。
メディアは勝手にいろいろ書き立てたようだが、
本人同士だけにわかる確かな信頼関係があったのだろう。
映画の中のウォーホルは、節度を忘れない優しい人だった。
年下の親友を案じつつも、うるさいことは言わず、
芸術家として尊重し、人としても対等に付き合う。
ウォーホルも、移民の子とかゲイだとかで
好奇の目で見られることが少なくなかったようだから、
バスキアのつらい立場がよくわかったんだと思う。
繊細なバスキアの心に、
ウォーホルの急逝は決定的な打撃を与えたようだった。
孤独を深め、壊れていく姿を観るのはつらかったな。


【さびしいのはなぜか】

クスリの過剰摂取で亡くなったということだった。
誰がどういう状況で発見したのかねえ。
ひとりぼっちで死んだんだろうか。
語られなかったからわからないが、
なんだかなあ。

温かいけど、さびしくなっちゃう映画だったなあ~。
「もう会えなくなってしまった」そんな気持ちがね、
閉じ込められた映画だった気がする。
だからさびしくなっちゃったんだと思うなあ。

 

【絵も鑑賞してくるつもり】

冒頭で紹介したバスキア展、わたしも
足を運んでくるつもりだ。
また、バスキアの生涯やその活動を振り返る
関連映像作品は他にもある。
それらにもできるだけ当たっていきたい。
わたしこれまではバスキアのことを
ちっとも知らなかったクチだけれども、
まあ、出会った時が知りたい時だから。