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ユヌキャバンヌの「昨夜も映画を観てました」

Netflixドラマ『FOLLOWERS』-第5話

 

英題:FOLLOWERS
蜷川実花監督
全9話
2020年2月27日全話一挙配信(完結)

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【第5話 あらすじ】

タミオと再会し、ふたりの将来に夢をふくらませるリミだが
彼から思いがけない告白を受ける。
バッシングで落ち込むなつめは、親友の叱咤も受け入れられず。
あかねはマンションの隣に引っ越してきた男性と距離を縮める。
エリコの息子ルイは、エリコの年下の恋人スエオに心を開く。




【第5話 疑問・謎】

・売れっ子とは言え一介の写真家の誕生日パーティー
 こんなにも盛大に開催されるものか。
 40にもなろうという良い大人の誕生日祝いなのに、
 なんて享楽的で、頭の悪そうなパーティーなんだ。
 
・なつめが炎上したことが納得しにくい。
 知名度がある程度なければバッシングのしがいもなく
 あんなに話題にはならないのではないかと思う。
 だが、なつめがバッシングにさらされるほどの知名度
 獲得していたと納得できる十分な描写がなされていない。
 だから、彼女が炎上し叩かれることがピンと来にくい。
 例えばトーク番組に出演したり、取材を受けたりして、
 カメラの前で印象的な発言をするシーンでもあれば、
 彼女が世間にどうとらえられているか、少しは感じられた。
 でも彼女はまだタレントとして何ら公的な発言をしていない。
 これでは世間と彼女との関係も全然わからないのではないか。

・キャラクターの言動に一貫性がないことについて説明が不十分
 <例:タミオ>
 大手写真誌の仕事を蹴ったと後輩に語ったのに、
 結局その写真誌の仕事が決まったと言って、リミの元を去る。
 <例:リミ>
 タミオとの子を持てる可能性が低いと判明したにも関わらず
 「最近元彼(タミオ)とイイ感じでさ・・・」と友人に話す。
 <例:サニー>
 失恋の痛手でスランプに陥っていたサニーに至っては、
 「悩むくらいなら告白しろ、好きな人がいることは幸せなこと」
 と友人にアドバイスされると、
 まだなつめに愛を告白したわけでもないのに突如元気になり、
 アホの子みたいに笑いながら街を走り抜け創作に没頭し始める。
 このドラマのキャラの中で、サニーが一番、挙動がおかしい。
 頭大丈夫か。


【第5話 好感】

今から述べる点を、果たして、この物語の良い所として
確定的に評価して良いのかどうか、まだ自信はないが・・・
 
・やはり、下手なサブリミナル効果か強迫観念のごとく
 何度も何度も何度も挿入される東京タワーのカットは、
 リミが内面化している未成熟なフェミニズム的価値観が
 言わば具現化したものである、との実感を強めた。
 (それが使い古されたメタ表現かどうかは別として)
 直截な表現をすれば
 「屹立する東京タワーのように立派な男根は私にはない。
  でも、あたかもあるかのような勢いでタフにハングリーに
  『男らしく』生きる、それが私なのよ!」。
 だが、第5話で、リミとタミオが東京タワーの内部に入り、
 リミはそこで、タミオから重大な告白を受ける。
 実は彼は子どもができにくい体質になっていたのだ。
 リミの「新しい女」幻想の投影としての東京タワーが
 この時、内側からへし折れたと解釈できると思う。
 だが、リミが、このできごとから何かの学びを得れば、
 この東京タワーから「成長」という素晴らしい成果が
 放出されることになる。そういう風にも言えるのでは。
 具体的にはどういうことかと言うと、
 リミの第一希望はタミオと結婚して子どもをもうけること。
 望めばそれは叶えられる、リミは当然のようにそう思っていた。
 好きな男と結婚すれば、1年か2年で自然に妊娠できる、
 そうに決まっている・・・みたいな感覚だ。
 だが、タミオの告白を受けて初めて、
 その考え方の幼稚さを知ったのだろう。
 自分が当たり前だと思っていることが、そうではないこと。
 他人には他人の独自の人生、さまざまな事情があること。
 他人は自分の理想の人生設計のためのパーツではないこと。
 そういうことを知ったのだと思う。
 タミオも早晩、体のことをリミに話すつもりだったのかも。
 でもその時期は彼にとっては今ではなかったかもしれない。
 それなのにリミは、何も知らなかったとは言え、
 自分の要求を無邪気に押し付けたことで、あまりに性急に
 タミオにとってきわめてナイーブな告白をさせてしまった。
 リミはそんな自分を心底恥ずかしく思ったのではないか。
 否、彼女がそういうことを、ほんの少しでも思えたなら、
 (別にそのままこの通りの気持ちではなくてもかまわない)
 それだけでも彼女はかなり何か、変わってくる気がする。
 実際、この後リミは、かねて精子提供を打診していた友人
中村獅童)と会い、セクシャルマイノリティとしての彼の
 複雑な悩みを知る機会に触れている。
 これも、リミの学びと成長の可能性を示唆し、補強する
 重要なエピソードだったと言えるはずだ。
 ・・・はず。多分。

・「眼そらさないでさ ちゃんと傷付いたら?」から始まる
 サニーのセリフは秀逸であった。
 炎上騒ぎでイジケたなつめを叱咤しての言葉だった。
 アホの子サニーちゃん的な印象が固まりつつあったが
 瞬間的にやる気スイッチオン! である。 
 サニーちゃん、どうした急に!! 目が覚めたのか!!
 蜷川実花監督!! やればできるじゃないですか!!!
 一瞬だけど監督のこと見直しそうになりましたよ!!!
 こういう生きたセリフ、すごく良いですよ!!!
 なんですかこれは。良いじゃありませんか!!!
 監督の実生活のどこかでこんなやり取りがあったのかね? 

・子どもが欲しいリミのために、自分に何かできないかと
 タミオが奔走する場面は、可愛くてとても良かった。
 オーガニック食品店の店員との会話はバカバカしすぎて、
 あんなシーンは丸ごと焼き棄てちまえ、と思ったけど、
 でも、病院のシーンは良かったな。キュートで笑えた。
 タミオ役が浅野忠信で良かったな、と一瞬思った。
 タミオがこんなに努力したことを、リミは知らない。
 このことを、いったいどう解釈すれば良いのか・・・。
 というか、身もフタもないことを言うようで恐縮だが、
 リミとは、周囲の人たちがこうまでこぞって
 何かしてあげたいと思うほどの人物なんですかね。
 リミの何が彼らにそうさせるんですかね。
 改めて考えてみると、その部分、まったく共感できない。
 何かしたい! 力になりたい! とみんなが思う人物、
 それがリミです、と思わせる説得力がこのドラマにはない。
 ひとつだけわかるとすれば、かつて下積み期だった友人に
 カレーライスをおごったことがあるということくらいだ。

【第5話 疑問・謎(蒸し返し)】

 話を蒸し返すようで恐縮だが
 あれだよな、タミオは結局、あきらめたんだよな。
 先に述べた通り、タミオは子どもができにくい体質だ。
 だが、子どもを持ちたいというリミの夢を知って、
 俺ももう一度、自分の可能性に賭けてみようかな・・・と
 発奮したようだった。理論上、可能性はゼロではないのだ。
 でも、結果としては、やはり難しかった。
 これを受けてタミオは、リミの元を去る、
 普通にストーリーを見守る限り、そういう流れだった。
 体質という事情があるのだし、努力を断念したのは是非もない。
 だが、おかしいと思ったのは、その時のタミオの言い草だ。
 もっと言うなら、やはり作り手の不手際からくる説明不足。
 タミオは、リミにこう伝える必要があったのではないか。
 「君は子どもが欲しいんだよね。
  俺はこの通り、難しい体質なんだ。
  でも、ダメだったらゴメンだけど、ちょっと努力してみる。
  君を見てたら、何だか、そうしてみたくなったんだ」
 それがなかった。物語上のタミオの行動は以下の通りだ。
 (1)リミに「子どもができにくい体質」と告白
 (2)わずかな可能性に賭けてこっそりあれこれ奔走
 (3)でもやっぱりダメだった。あきらめる
 (4)リミに伝える
   「二人で暮らすのはムリ」「大きな仕事が決まった」
   「自分の心の声を聞け」「求めよさらば与えられん」 
 (5)リミの元を去る 
 努力したことをリミに伝えもせずに、
 「お前が本当に欲しいのは妊娠出産で、俺ではない」
 と決めつけたに等しいことを言ってのけ、勝手に去った。
 この流れはどうか。
 もしかしてと思って俺も頑張ってみたけどダメだった、
 俺と一緒にいてもやっぱり子どもは望めそうにないよ、
 でも、そのうえで、俺は君と一緒にいたいと思う。
 君はどうしたい? ・・・と 
 なぜリミに一度でも、確認しなかったのだろう。
 というかタミオは何のためにリミの前に現れたのか。
 タミオ自身は、リミと何がしたかったのか。
 まったくわからない・・・
 単純にリミに何かしらの心地良いものを提供するか、
 成長を促す存在として登場させただけ? としか思えない。
 リミの第一希望はタミオの指摘通り「子ども」であり、
 子どもさえ持てれば父親は誰でも良い、のだろうか?

わからない・・・
わからないことが多すぎる・・・
登場人物たちに意味不明な行動をさせまくって
各話ごとに数えきれないほどの疑問点を残していく。
これらのすべてが計画的な問題提起であり
最終話に向けてひとつひとつ収束し解決されていく
そう信じて観ていて良いのだろうか???
頼むよ。頼むからそうであってくれ。

リミとなつめはいつ出会うんだ!!!