原題:Le Temps qui reste
英題:Time to Leave
フランソワ・オゾン監督
2005年、フランス
主人公であるロマンの、2つのセックスのシーンは、
この物語にとって重要だと思う。
ひとつは、同性の恋人と愛し合うシーン。
生々しいけど美しい場面だった。
時間をかけて意味ありげに描写するのではなく、
さらりとしていた。
ロマンがゲイであることは物語の主題に関わっている。
でも、「主題そのもの」ではない、ということだろう。
それから、不妊で悩む夫妻に協力して行うセックス。
こちらは観る側に何かを告げるための場面ではなく、
ロマンの「旅支度」に大きな意味を与えた行為だった。
子宝に恵まれない夫妻と、ゲイの青年が3人で、なんて、
相当ショッキングなことをやっていたと思うけど、
意外と、観ていて全然ショックじゃなかった。
遠慮がちな思いやりにみちた、静かな行為だった。
ロマンはひとりで死ぬことを選ぶ。
でも彼が彼自身を慈しんでいることはわかった。
幼かった頃の思い出のひとつひとつが幻影となり、
死にゆくロマンに付き添ってくれる。
「死」は暗くて怖いものという感じがするが、
この映画は「死」へと歩む主人公を陽の光に包んで見守る。
わたし自身の死も、こんな感じだと良い。
ロマン役のメルヴィル・プポーは健闘していた。
病院のシーンがほとんどないから、
病に説得力を与えるのは、プポーのやせていく体だけなのだ。
減量が大変だったろうな。